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知らなきゃ損!「国民健康保険」と「国民健康保険組合」の違い|選び方完全ガイド

フリーランスとして独立したとき、最初に直面するのが「健康保険、どうする?」という問題です。会社員であれば社会保険に自動的に加入していましたが、フリーランスになると自分で保険を選んで加入しなければなりません。
実は、フリーランスが加入できる健康保険には、大きく分けて「国民健康保険」と「国民健康保険組合」の2種類があります。名前は似ていますが、内容や手続き、保険料の仕組みはまったく違います。
どちらが自分に合っているかを知るためには、制度の違いを理解し、メリットとデメリットを比較することが大切です。この記事では、両者の違いやメリット・デメリット、さらに実際の保険料の差まで、具体例を交えてわかりやすく解説します。
国民健康保険と国民健康保険組合の基本をおさらいしよう
まずは、フリーランスが加入できる2つの制度「国民健康保険(市区町村国保)」と「国民健康保険組合(国保組合)」の基本的な仕組みを整理しておきましょう。違いを知ることで、自分に合った保険を選びやすくなります。
国民健康保険(市区町村国保)とは?
国民健康保険は、各市区町村が運営する健康保険制度で、フリーランスや個人事業主、退職して健康保険を外れた人などが対象になります。保険料は主に以下の3つの要素で決まります。
- 前年の所得
- 世帯の人数
- 資産の有無
なお、国民健康保険にも、国民健康保険組合にも、会社員のような「扶養制度」はありません。一人ひとりが被保険者として保険料を支払う必要があります。
このため、保険料は「所得」と「家族の人数」などに応じて大きく変わるのが特徴です。所得が高いほど保険料も高くなり、家族が多い場合はそれぞれに保険料がかかります。また、保険料の計算方法や料率は市区町村ごとに異なるため、地域差もあります。
国民健康保険組合(国保組合)とは?
国民健康保険組合は、特定の職業団体(例:文芸、美術、建築など)が運営している健康保険制度で、同じ業種で働く人たちが集まって作った組合です。加入には以下のような条件があります。
- 組合ごとに定められた職種に該当していること
- 一定の収入や実績が求められること
たとえば「文芸美術国民健康保険組合」の場合、ライター、編集者、デザイナー、カメラマンなどが対象です。保険料は定額制で、年齢や所得に関係なく一定額であるケースがほとんど。
組合によっては健康診断やメンタルヘルス支援などのサービスも充実しており、安心して利用できる点も魅力のひとつです。また、業界に特化した情報提供や福利厚生が受けられることもあり、フリーランスにとって心強い選択肢となります。
国民健康保険よりお得? 国民健康保険組合という選択肢
フリーランスや個人事業主にとって、「国民健康保険組合」は見逃せない選択肢です。市町村の国民健康保険に比べ、以下のようなメリットがあります。
保険料が定額
国民健康保険は所得に応じて保険料が変動しますが、国民健康保険組合は所得に関係なく一律。高所得者や収入が不安定な人にとっては、家計管理がしやすくなります。
高所得者ほどお得になる可能性
所得が高い場合、国民健康保険より保険料が抑えられるケースも多く、結果として節税につながることもあります。
手厚い付加給付や福利厚生
組合によっては、以下のような独自サービスを提供しています。
- 出産祝い金
- 健康診断・人間ドックの補助
- インフルエンザ予防接種の補助
- 保養施設の利用割引
- 家庭常備薬の斡旋 など
同業コミュニティによるつながり
同じ業種・職種の人が加入しているため、情報交換やネットワークづくりの機会も。保険料のアップダウンに悩まされず、安心して働きたい人には、国民健康保険組合という選択肢が大きな助けになります。
国民健康保険組合にも注意点あり!
多くのメリットのある国民健康保険組合ですが、以下のようなデメリットがあります。
加入条件がある
業種の確認や、仕事実績の証明書類、請求書や名刺の提出などが求められます。書類の準備や手続きに時間と手間がかかることもあります。
所得が少ない人には不利なことも
国民健康保険には「所得が一定以下なら保険料を軽減する」制度がありますが、国民健康保険組合は原則定額。そのため、所得が少ない人にとっては割高になる可能性もあります。
さらに、国民健康保険組合は組合員数が少ない場合、運営が安定しにくく、保険料や給付内容が見直されるリスクがある点も注意が必要です。
家族がいる人は要注目!保険料の違いを試算してみよう
たとえば東京都江戸川区在住、35歳・所得300万円(売上500万円ー経費200万円)で配偶者35歳と子ども2人(7才、3才)がいる場合
国民健康保険の計算例
所得割+均等割 = 約56万円/年
文芸美術国保の計算例
(本人25,700円+家族3人×15,400円)×12か月 − 未就学児支援12,000円= 約85万円/年
この例では国民健康保険の方が安いですが、文芸美術国民健康保険組合は年収にかかわらず保険料が一律なのが特徴です。年収が700万〜800万を超えると、市町村国保より割安になることも。ただし、家族が多い場合や所得が低い場合は国民健康保険が有利なケースもあります。
文芸美術国民健康保険組合の主な特徴
- 収入にかかわらず一律
- 出産育児一時金:50万円
- 葬祭費:最低7万円を支給
- 人間ドック・健康診断への補助あり
- 未就学児がいる世帯には年間12,000円の軽減措置
加入には対象職種に対応した団体への所属が必要ですが、該当する組合があれば、経済的にも健康面でも大きな支えとなります。まずは自分の職業で入れる組合があるか、調べてみるのがおすすめです。
国民健康保険と国民健康保険組合、どちらを選ぶべき?判断の4つのポイント
どちらを選ぶかを判断するには、以下の4つのポイントを押さえておきましょう。
1.前年の所得
所得が高い人ほど、所得に関係なく定額である国民健康保険組合の方が保険料を抑えやすい傾向があります。フリーランスで年収が安定して高い人には特に有利です。
2.扶養家族の有無
国民健康保険組合では家族1人ごとに保険料が定額で加算されるため、扶養家族が多いと保険料負担が増える傾向にあります。一方、市町村の国民健康保険では、所得が低い場合は軽減措置があり、家族が多くても所得次第で保険料の増加が抑えられるケースがあります。
3.加入資格
国民健康保険組合は業種ごとの団体が運営しているため、自分の職種が対象かどうかを確認する必要があります。たとえば、文筆業やデザイン業などが対象になるケースがありますが、加入には実績の証明が求められることもあります。
4.将来の働き方
今後の収入や家族構成の変化を見越して、柔軟に対応できる選択をすることも大切です。たとえば、今は単身でも今後家族が増える予定があるなら、保険料の試算をあらかじめしておくと安心です。
まとめ:保険の選択は「自分の働き方とライフスタイル」に合わせて
フリーランスにとって、健康保険は「いちばん身近な社会保障」です。
国民健康保険と国民健康保険組合、それぞれにメリット・デメリットがありますが、どちらが正解というよりも、「いまの自分にとって最適な選択か」がカギになります。
収入や家族構成、仕事の安定性、将来設計などをふまえて、どちらが自分に合っているかを見極めましょう。
まずは市町村の保険料シミュレーションをしてみたり、自分の職種で加入できる国保組合があるかを調べてみるのがおすすめです。
「知らなかった」で損をしないために、制度をきちんと理解し、自分に合った保険を選んで、安心してフリーランスライフを楽しんでいきましょう。
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