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【徹底比較】国民健康保険と任意継続、どっちを選ぶ?フリーランスになったら最初に考えたい保険の話

会社を退職しフリーランスとして独立したとき、最初にぶつかる壁のひとつが「健康保険、どうする?」問題ではないでしょうか。
退職後に選べる健康保険は大きく2つ、「国民健康保険」と「任意継続被保険者制度(以下、任意継続)」です。でも、いざ選ぶとなると「どっちがお得?」「どう違うの?」と迷ってしまうものです。
この記事では、それぞれの違いやメリット・デメリット、選び方のポイントをわかりやすく解説します。ご自身の状況に照らし合わせながら、最適な健康保険を選択しましょう。
なお、フリーランス互助会では、起業支援や業務支援など、フリーランスや個人事業主向けのサポートを提供しています。個人事業主やフリーランスとして働く中で不安がある方は、ぜひフリーランス互助会にご相談ください。
国民健康保険と任意継続、どっちを選ぶべき?まずは違いを理解しよう
まずは、それぞれの制度の基本を押さえておきましょう。
国民健康保険(国保)とは?フリーランスが加入する一般的な公的医療保険
自治体が運営する健康保険制度で、被用者保険の対象外となったフリーランスや個人事業主、無職の方が加入対象です。保険料は前年の所得や家族構成などに応じて決まり、地域によっても金額が異なります。
主な特徴
- 保険料は前年の所得に基づいて決定され、所得が下がれば翌年度以降の保険料も下がる
- 扶養の概念がなく、家族一人ひとりが被保険者となり、それぞれに保険料がかかる
- 傷病手当金や出産手当金など、会社員時代の健康保険で受けられた給付がない場合が多い
- 健康診断などの福利厚生も限定的
任意継続とは?会社の健康保険を継続できる制度
退職後も、会社員時代に加入していた健康保険(協会けんぽや健康保険組合)を最長2年間継続できる制度です。
主な特徴
- 加入条件:退職前に2か月以上の加入歴があり、退職日の翌日から20日以内に申請が必要
- 保険料:全額自己負担
- 保険料の計算方法:標準報酬月額を基に算出され、2年間は一定
- 扶養家族の扱い:同じ保険に加入でき、扶養家族分の保険料が別途加算されない
- 給付内容:加入していた保険によっては、独自の給付や福利厚生が継続されることも
- 注意点:傷病手当金や出産手当金など、給与補償に関する給付は原則対象外
どっちがお得?メリット・デメリットを比較【早わかり表】
国民健康保険と任意継続、それぞれの特徴をひと目で比べられる表にまとめました。ご自身に合った保険を選ぶための参考にしてください。
比較 | 国民健康保険 | 任意継続 |
---|---|---|
加入手続き | 市区町村で申請 | 健保組合へ申請(退職後20日以内) |
保険料 | 所得によって決まる | 一律で計算(標準報酬月額に基づく) |
保険料の負担 | 家族が多いほど負担が増える | 家族を不要できる(保険料は変わらない) |
加入期間 | 制限なし | 最長2年間 |
保険内容 | 一般的な医療保障 | 在職中とほぼ同じ保障内容 |
国民健康保険と任意継続、どっちが安い?保険料の試算がカギ!
どちらを選ぶにしても、保険料は人によって大きく異なります。
【国民健康保険】
各自治体(市区町村)の公式ウェブサイトに「国民健康保険料試算シミュレーター」や「保険料早見表」が用意されている場合があるので、住んでいる自治体の公式サイトで試算するのが最も正確です。
【任意継続】
会社員時代に加入していた健康保険組合や協会けんぽの公式サイトで、「任意継続保険料の計算方法」や「保険料表」を確認できます。退職時の給与明細や標準報酬月額をもとに、該当する保険料を確認しましょう。
年間で数万円以上の差が出ることもあります。「なんとなく」で決めず、必ず試算してから選びましょう!
具体的なモデルケースで保険料をイメージしよう
ここでは、ケースごとに分けて保険料のシミュレーションをご紹介します。
ケース1:年収300万円、家族なしの場合(東京都大田区・本人35歳)
国民健康保険
- 売上300万円、経費100万円 → 所得200万円と仮定
- 年間保険料:約23万円(本人のみ)
任意継続
- 退職時の標準報酬月額:約24万円で試算
- 月額保険料:約24,000円 → 年間保険料:約29万円
ケース2:年収500万円、家族(配偶者・子ども1人)ありの場合(東京都大田区・本人35歳)
国民健康保険
- 売上500万円、経費200万円 → 所得300万円と仮定
- 年間保険料:約47万円(本人+配偶者+子ども分を含む)
任意継続
- 退職時の標準報酬月額:約32万円で試算
- 月額保険料:約32,000円 → 年間保険料:約38万円
- 配偶者・子どもに追加保険料はかかりません
※モデル条件:配偶者35歳・パート勤務(年収103万円以下)、子ども5才
このように、所得や家族構成によって「どっちがお得」かは大きく変わります。ご自身の収入や家族構成、保険内容を考慮したうえで、必ず試算してから選択しましょう。
国民健康保険?任意継続?最後の判断に役立つチェックリスト
早見表やモデルケースを見ても「やっぱり決めきれない…」という方へ。最後に、自分にとってどちらが合っているかを見極めるためのチェックポイントを5つご紹介します。
1. 前年の所得は多かった?少なかった?
多かった場合
国民健康保険の保険料は所得に応じて計算されるため、所得が多いほど保険料も高くなります。任意継続は退職時の給与に基づくため、一定の保険料負担が予想できる点がメリットです。
少なかった場合
国民健康保険は所得に基づくため、低所得者は保険料も低く抑えられます。任意継続は退職時の収入に基づくため、フリーランスになり収入が下がった場合でも保険料は高めに設定されがちです。
2. 扶養家族がいる?
扶養家族がいる場合
任意継続は扶養家族の追加保険料は発生しません。一方、国民健康保険は家族分も保険料に反映されるため、人数が多いと保険料が高くなりやすい傾向があります。
扶養家族がいない場合
国民健康保険は世帯単位で保険料が決まるため、1人分の負担で済む場合は任意継続と比べて保険料が安くなるケースが多いです。
3. 健康保険組合の給付内容が手厚かった?
手厚い給付があった場合
任意継続では「給与の補償」にあたる出産手当金や傷病手当金のような給付は受けられませんが、一方で以下のようなメリットが引き続き得られることがあります。
- 高額療養費の自己負担分をさらに軽減する「付加給付」
- 人間ドックの補助や出産育児一時金の上乗せ分など
特にメリットがなかった場合
任意継続のメリットは限定的です。保険料、扶養の有無、加入期間などの観点で判断するとよいでしょう。
4. 今後の収入見込みは?
収入が増える予定の場合
国民健康保険は収入が増えると負担も増加します。任意継続は退職時の収入に基づく固定的な保険料で済みます。
しばらく低収入が見込まれる場合
国民健康保険は収入が低い場合に保険料が下がるため、低収入期間が続くなら国民健康保険の方が経済的に有利です。
5. 2年以内に再就職の予定はある?
予定がある場合
任意継続は最長2年間の制度です。2年以内に新しい職場の健康保険に加入する見込みがあれば、それまでの「つなぎ」として任意継続を選ぶのも安心です。扶養家族がいる場合は、任意継続のほうが保険料を抑えられることも。
再就職の予定がない・しばらくフリーランスを続ける場合
フリーランスとして長期的に活動するなら、状況に応じて保険料が見直される国民健康保険のほうが柔軟に対応できます。また、自治体によっては所得の状況に応じた減免制度が用意されている場合もあります。
まとめ:自分に合った保険選びは“比較+試算”が決め手!
フリーランスとしての第一歩は、「自分に合った健康保険選び」から。
国民健康保険と任意継続、どちらがベストかは、ご自身の所得・家族構成・加入していた健康保険の内容・今後の働き方 によって大きく変わります。この記事の比較ポイントや試算ツール、チェックリストを活用して、納得できる選択をしましょう。
迷ったときは、住んでいる自治体の保険課や、加入していた保険組合に相談してみるのもおすすめです。不安を残したまま進まず、しっかり情報収集して、自分にとって最適な保険を選びましょう!
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